モーテンソンだより(その22: 6/17)

6月17日(金)

今日の予定

  • 8:30 am / Transportation from Hotel to Ohio State University (OSU) Thompson Library
  • 9:15 - 11:00 am / OSU Thompson Library Overview and Tour
  • 11:00 - 12:00 NOON / Lunchen
  • 12:15 - 12:45 pm / Transportation from OSU to Westerville Public Library
  • 12:45 - 3:30 pm / Westerville Public Library Tour / Dsicussion
  • 3:30 pm Transportation from Westerville Public Library to Illinois

オハイオ州コロンバスでの図書館訪問2日目。

快晴のもと、ホテルを朝8時半に出て、20分ほどでオハイオ州立大学(OSU)に到着する。
スーザンによると、学生数は50,000人(イリノイ大学は45,000人)ということで、巨大な大学だ。またそれにあわせてキャンパスも負けず劣らず大きいし、統一感と緑とで美しい。

しばらく待ったのち、9時半、先方の用意ができたようで、プレゼンテーションルームに案内される。

ここでは、図書館の"Renovation 2000-2009"というテーマで、10年をかけて学内図書館の新築とリロケーションを成し遂げたという、壮大な話のプレゼンテーションを受けた。

学内の意見を集約するため、教員はもちろんのこと、学部学生、大学院生のそれぞれのフォーカスグループ(FG)を作り意見を求めたこと、2006年から3年間休館せざるをえなかったことから、その間の利用者に対する徹底した広報と説明を実施するなど、あげればきりがないほど、すごい話の連続だった。

その内容をすべて伝えることは難しい。しかしその中身のすごさと同時に私の印象に残っているのは、説明(プレゼンテーション、そして案内も)をしてくれた、Presentation Director(こうしたポジションがあること自体がすごい)のWesley Boomgaardenさんの熱い語りだった。ご自身もかかわったというこのプロジェクトに対し、その語りからは、計画がいかに図書館、大学の総力を挙げて取り組んだものか、出来上がったものがいかに素晴らしいか、そうしたことへの自負心をみなぎらせて熱く語るのである。(こうした熱い語りは、前日のOCLCのスタッフも同じだった。自分たちのやっていることへの自負心、確信をみなぎらせていた。もちろん、それはまったく嫌味に思えるわけもなく、ただただ感心するだけだった)

そうしたウェスレイさんのプレゼンテーションは1時間位もあっただろうか、でもあっという間に思えるほど話に引き込まれ、長さを感じなかった。

訪問者は2グループに分かれ、館内ツアーに出た。私はウェスレイさんのグループに入った。
以下はそのツアーの中で撮った写真である(しかし、なんと間が悪いことに、バッテリーが昨日の時点で切れかかっていた。途中から携帯電話のカメラで撮らざるを得なかった。悔やまれる)。

図書館入り口脇にはカフェがある。相当に広い。

入口をはいると大きな吹き抜け。建物は11階建て。上のほうに見えるのは蔵書スペース。ガラス張りで下からよく見えるし、上に上ると下がよく見える。

 

1階の床には、世界各国のいろいろな文字のプレートが。ひらがなの五十音も埋め込まれていた。ちょっとびっくり。イタリアのヒメナから、これはどういう意味をもった文字かと聞かれたので、これはアルファベットと同じ表音文字であることを説明する。

 

2階の閲覧スペース。ここはPC利用可のスペース。午後になると太陽の光が入ってくることを計算して設計されたとのこと。

 


同じ階の大閲覧室。トラディショナルな造りである。

ウェスレイさんによると、トンプソン・ライブラリーの歴史の中で、3つの節目の時期があったとのことで、現在の図書館は、そのときどき(それぞれがいつかというのはきちんと聞き取れなかった。1930年代、1950年代だったか… そして、現在を第3期ととらえる)の図書館の様子を再現したのだそうだ。この大閲覧室は第2期目に相当するとのこと。



閲覧室はレファレンス資料も置いてある。部屋の外側には日本研究用のレファレンス資料もあった。

最上階。これが第1期の再現とのこと。


(注:ここで完全にカメラのバッテリーが切れてしまいました。ここからは携帯電話のカメラで撮ったのですが、PCに取り込む手段(メモリのアダプタ)を持っていないので、帰国後、フォローアップします m(_ _)m )


ツアー後、一堂で昼食となる。
ここでもウェスレイさんの隣(というか、テーブルの角どうし)に座っていろいろ話をしてみた。
どこから来たか、趣味は何か(旅行? そりゃけっこうだ、私も好きだ。アメリカは何回目? 3回目、それはけっこう。あとはどこへ行ったことがある? おお、ヨーロッパが好きなのか、みたいな感じだ)、どこで図書館情報学の教育を受けたのか(ちょっと意外な質問。図書館情報大学修士課程、現在は筑波大学と合併… とは言ってみたものの、ご本人はご存じかどうかは…)、といったようなよもやま話だ。(ただ、ここでウェスレイさんの口から"Librarianship"という言葉が出てきた記憶がある。記憶違いかもしれないが、それでもこの言葉をこのとき、はっきりと思い出したことは自分の覚えとして記録しておきたい)
日本の地震津波による被害についても聞かれた。

ここまではだいたい社交のレベルの会話である。
しかしこの後、私がプレゼンテーションされた中身に関する質問をしたことから話題が図書館の話になった。そうするとウェスレイさんの話に俄然力が入ってきて、図書館間協力(ここオハイオはかのOHIO Linkを実現している地である)、電子リソースの現状とこれから(ジャーナル、ブック。米国では相当に電子ブックへのシフトは進んでいるらしい。日本でもそういう話は聞いていたが、こっちで聞いていると本当なんだな、と思えてくる)、電子リソースの共同購入(これはすごいと思う。サブスクリプションだけでなく、論文単位での購入など、バリエーションを付けて総体を契約することでコスト管理をしているということだった)、E-DDS、などなど、話題は尽きない。
最後のほうではリーダー論となり、リーダーはビジョナリー(Visionaly)であることと、意思決定(Decision Making)ができることが大切だと言っておられた。リーダーシップは今回の研修の統一テーマでもある。

参考:OHIO Link http://ci.nii.ac.jp/naid/110002827045

こうしたウェスレイさんの話を聞いていると思わず引き込まれ、こっちも興奮してくるのである。内容もそうだが、語り口にも影響されているような気がした。

どこかで考えとまとめたいと思っているのだが、このオハイオの2日間は、いずれも、自らの仕事を熱く語る人たちから素晴らしい仕事の成果を聞くことができた。こうしたことを繰り返していることで、なんだか、この研修に参加して一番知りたいと思っていたことが少し体感できてきたような気がしてきた。

ちなみに、ウェスレイさんのプレゼンテーション資料(PPT)のトップページには、こうあった。

The Ohio State University
A Great University
A Great Library

こうした表現が大袈裟なんて思えない。そんな現実を見せてもらった。


さて、午後はWesterville Public Library訪問である。
ここでも1時間ほどのプレゼンテーションを受けた後、見学をした。

プレゼンテーションのタイトルは、"Changing Service Models"、話をしてくれたのはAdult Servce ManagerのNiera Nuwelsさん。
ちなみに、訪問したほとんどの図書館がそうだったと思うが(大学、公共を問わず)、"Manager"という肩書を持った人たちには、きちんと独立した1室(ただし、扉はないか、オープンにされている)が与えられていた。

ここは、ICTを活用することを中心とした先進的なサービスを実践するところとして、訪問プログラムの中に組み込まれたらしい。

プレゼンテーションの中身も総じてそうした話題だった。そうした話題自体は、日本でもよく聞くところではあるので、改めてここで紹介しようとは思わない。また、モビリティ(Mobility)がキーワードといわれても、アマゾン・ドットコムでの売りあげの半分以上が電子資料になったという(ちょうど先日そんな話題がツイッターで流れていたような気がする)米国と、法的にも電子化のハードルが高く、また心情的(?)にもプリントを尊重するわが日本では同列には論じられない(と思う)。

それでもツアーに出て驚かされたのは、児童スペースの広さと、ドライブスルーによるサービスである。

写真は後日アップすることにするが、すでに訪問していたBloomington Public Libraryもそうだったが、「コーナー」なんてもんではないのである。
フロアの一角にコーナーとして設けるか、あるいはフロアの大きな部分を子ども用にデザインするか。それはもちろん現実的な制約はあるかもしれないが、それとともに基本にあるはずの「考え方」にも影響されているのではないか。
この図書館は、既成の概念を乗り越えることを大切にしているようだった。ドライブスルーもそうしたことのあらわれなのかもしれない。その部門に行って見ていたとき、本当に何台もの車が入ってきて、本の貸し出しを受けていた。


さて、ここの訪問は15時半に終了し、イリノイに帰ることになる。

OCLCのナンシーさんは、コーディネータとして最後まで付き合ってくれた。スーザンとも友人のようで、移動の際スーザンはバスではなくナンシーさんの車にずっと同乗していた。

すばらしいコーディネーションをしてもらった。

ちなみに、今回に限らず、私たちが訪問する先では、どこも周到な用意がされていたと思う。
OCLCでも同じで、昼食の手配、プレゼンテーション(テーマによって複数の人が担当した)、ツアーなど、それぞれについて担当者が手配をするということで用意がされていたようだ。素晴らしいと思ったのは、プログラムの各パートを担当した人たちに対し、コーディネータであるナンシーさんは必ず、私たちの前で、たとえば、この昼食の用意を担当してくれたのは誰々でした、素晴らしい準備をありがとう、と担当したご本人に対する感謝を述べていたことだ。

スマートで、いい慣例だと思った。
またナンシーさんはすばらしいコーディネータと思う。改めて感謝である。

この人たちとモーテンソン・センターの人たち、それに限らず図書館界の人たちは、強い横のつながりを持っていることが感じられた。これも私が気になっているポイントの一つである。

さて、15時半にWestervilleを出発、また来る時と同じ時間をかけてシャンペーンに戻ってきた。
車内では、スーザンが一人一人を呼び出し、話を始めた。スーザンが担当したGrant Writingに関するセッションのアサイメントに関するコメントを伝えるためのようだ。
私も呼ばれ、話をしたが、残念ながらスーザンのいわんとすることがうまく聞き取れず、理解しきれなかった。スーザンもそれに気づいてくれたようで、じゃあ、メールで改めてやりとりをしよう、ということになった。
申し訳ないことだが、イリノイの人たちの英語は聞き取りにくい…(自分の力のなさが問題なのだけど)

帰着は8時10分。途中、一回だけトイレ休憩を入れて、JBはハイウエイを走り抜けた。

それからゆっくりできればよいのだが、土曜日は1日フリーであるものの、日曜日は朝7時に集合、1泊でシカゴに旅行、火曜日は研修最終日で、私は日本の地震に関する現状を報告しなくてはならない。また、次の滞在地であるニューオーリンズに向かうため、当面使わない資料などを日本に送り返すなど、やらなくてはならないことがたくさんある。あとあとのことを考えると、とりあえず洗濯だけはこの日のうちにしておかなくてはならない。ということで11時から洗濯を始め、終わって寝たのが1時過ぎだった。

その間、ツイッターをチェックしていたら、NIIが2012年度を以って、WebCat(従来からあるWebCat)のサービスを停止し、CiNiiをプラットフォームとして新たな総合目録サービスを始めるという情報が流れてきた。

http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/2011/06/webcat_1.html

ツイッター上では、現在のWebCat Plusは総合目録としての役割を果たしていないなどと指摘する向きもあった(自分もそう思っているし、現場の人間の少なくない人たちがそう思っていると思う)。

ちょうど、OCLCで、コンピュータルームのWorldCatのサーバを見つけた時、参加者のほとんどが指をさして感嘆の声をあげているのを見てきたばかりである。

いろんなことを考えてしまった。寝るのが遅くなったのはそのせいでもある。