ピッツバーグ-> ナリタ: 6/30-7/1

6月30日(木)

日本へ帰るための移動日。

宿泊したホテルはピッツバーグ大学の近く、オークランドにある。ここから空港へは車を使うしかない。
グッドさんに相談したところ、やはり来た時に使ったシャトルバスが一番いいだろうとのこと。
空港から来る際に、片道にするか往復にするかを聞かれたのだが、なんとはなしに片道でいいと答えてしまった。なので、空港までの手配をしなくてはならない。ホテルのカウンタースタッフに予約をしてくれるかと尋ねたところ、ここに連絡すればいいといって連絡先を書いた紙をよこし、自分でやるように言われた。
電話ではまず不可能、というか、できても聞き取り違い、日時を伝えきれないなどの間違いが発生する可能性が私の場合高い。電話とは別にネットで予約できるとのことだったので、それで予約をすることにした。まったくノートPCが今回の滞在にどれくらい役立ったことか。

サイトにアクセスすると予約画面が出てきた。

目的地、現在の滞在地(ホテルであれば検索して設定できるようになっていた)、本人連絡先(これは携帯電話番号)、フライト日時、便名を入力していく。フライト日時、便名を入れると、「この時間の車でどうだ」という感じでシャトルのリコメンドが出てきた。なかなかやるじゃん、とか思う。

最後に支払い情報、クレジットカード情報の入力である。これはすでに数え切れないほどやってきているので、遅滞なく入力する。
しかし、最後、"Billing Address"というのがある。「請求先住所」ということになるので私の日本での住所を入力するのが妥当だろうと思い、番地、町名、市名を入力していく。しかし、"State"と"Zipcode"のところで行き詰ってしまった。
州名については、プルダウンのなかから選択するしかなく、そこでは米国の諸州しか出てこない。「えっ?」という感じである。またZIPについて入力していくと、5ケタ以上の入力ができない。日本では7ケタなのだが米国は5ケタだからだ。要するに米国内居住者の予約しか想定していないのである。

まったくなんなんだよ、という感じである。

困ったことになった。こういう場合どうすればいいかと、ネットで"Billing Address"をキーワードにして検索もかけてみた。しかし出てくる情報で役に立ちそうなものはなかった。
しばし考えた末、電話でどうすればいいか確認することにした。ダメもとである。ホテルから渡された紙に書いてある電話番号宛てに電話をかける。用件によって該当する番号を押せという、日本でもおなじみの機械的なメッセージが聞こえてくる。そのままにしておくとオペレータ嬢の声が聞こえてきた。米国のアドレスしか入力できない、これは空値でいいかといったことを片言で伝えると、先方は(私が理解した限りでは)それでいいという。そうか、と思い、電話を切った。

ではそうしようと思い、空値のまま画面上の[NEXT]ボタンを押す。

だめじゃん。
ちゃんと入力しろというメッセージが返ってくる。

さすがに頭にきた。

しばらく考えた後、もうどうにでもなれと思って、日本の住所を入力し、州名はプルダウンの先頭に表示されていた"Alabama"、ZIPは自分のところの郵便番号も頭から5ケタを入力し、えいっ!、と思って[NEXT]ボタンを押した。

画面は次の画面に遷移した。

あとは何の問題もない。確認画面が出て、これでいいかと聞いてくるので、いい(ほんとにいいの?)と答え、予約は完了した。

翌朝、6時半ころ、部屋の電話が鳴る。電話が鳴ること自体不思議な気がしたのだが、取ってみると、シャトルバス会社から、今日は7時50分から8時の間にあなたを迎えに行きます、といった内容の確認の電話だった。へぇーである。

会社としてはちゃんとしているのだから、予約画面についてはもうちょっと考えてほしいですね。

少し早目にチェックアウトをして、ホテルの正面玄関のところで待っているとシャトルも少し早目にやってきた。ドライバー氏は来るときと同じ人である。先方も覚えてくれていたらしく、「おお、あなたはおとといの…」というところまで英語でいい、"OHAYOGOZAIMASU"といきなり日本語で言ってお辞儀をしてきた。
この人、この後のふるまいを見ているとほんとうにまじめな人なのだけど、こういったパフォーマンスを自然にやってくれるのがなごみを感じられていい感じである。こっちも"MATAYOROSHIKU"とわけのわからない日本語を返していた。

空港まで、普通にいけば30分くらいで着ける。渋滞はそれほどないとグッドさんにもお聞きしていた。

しかし、渋滞で15分くらい流れなかった。事故渋滞であった。やっぱりこうしたことは起こりうる。早目に移動を始めて良かった。

シカゴ経由で成田、である。

シカゴに着いた時、例によって東部時間から中部時間に切り替わったことに気づかず、なんでまだ出ないんだ、といぶかしんでいる自分がいたのだが、もうそれについては詳しくはいいません。

成田行きの機内では、日本人の方と隣同士になった。

挨拶と自己紹介をしてみると、医療機器の海外営業が仕事だとのことで、南米への出張の帰りだということであった。

私が大学図書館で仕事をしているということで気を遣ってくれたのか、今スターバックス復興の物語を英語版(これは日本語版も出されている。ご存知の方も多いと思う。私も渡米直前に通販で買っておいた)でアマゾンで買って読んでるんですけど、米国の本屋をのぞいたらもっと安く売ってましてね、とか、英語の上達にはこうした本がいいですよとか教えてくれて、話は切れなかった。

しかし、彼の話でなんといっても面白かったのは、仕事先(出張先)で出くわした失敗の数々である。

イタリアのローマでは、車の窓ガラスが壊され、パスポート以下、いっさいの持ち物を盗まれたこと。また、夜一人でトレビの泉を歩いていると、旅行者と称して寄ってきたブラジル人と意気投合し、飲みに行こうといって連れて行かれたのが暴力バーで、大金を巻き上げられたこと(ほんとうにこわかったとおっしゃっていた。そうだろうと思う)。

アルゼンチンのブエノスアイレスでは、鳥のフンに似たようなものをかけられ、それを拭いてあげますといって寄ってきた女2人組に財布をすられそうになったこと(“鳥のフン”はマヨネーズとなにかを混ぜて作ってあり、すごいにおいがするらしい。これは未遂で終わる。)

どれも笑える話ではないのだけれど、ご本人も悔しいのはもちろんながら、面白おかしく話してくれるので、こちらも引き込まれてしまった。

では私も失敗話を(?)ということで、数年前、友人とアイルランドへ行こうと思って準備をし、すべての予約を済ませた出発の1週間前、自宅に空き巣に入られてパスポートを盗まれ、再発行が間にあわず旅行をキャンセルせざるを得なかったことを披露した。

ちなみに氏の経験した、トレビの泉での暴力バーの件と、ブエノスアイレスでの鳥のフンの件は、ネット検索するとまったく同じ手口で被害にあったことが報告されているそうだ。
だから余計に悔しかったのかも。

どの失敗話も笑ってられるものではないながら、でもやっぱり笑い話として十分使えるものなんだと思う。
失敗というのは(致命的なものでなければ)そうした性格を持っていると思うし旅に関することはいっそうその点面白さが増すようにも思う。

それ以外に、私が1か月の間、米国に関して感じたこと、思ったことをなんとはなしに話すと、彼はそれに対する自分の意見を述べてくれた。米国人は総じて食べすき傾向であること、ニューオーリンズのコーヒーがおいしいこと(これは両者一致した!)、米国は挨拶を重視する社会であること、などなど、話題はあちこちに飛んだ。

そんな話をする中で、自分はたぶん、いろいろ考えさせられたことのうち、いくつかのこと(挨拶重視の社会など)は観光という形での滞在であればわからなかったかもしれない、というと、彼もそれに同意してくれた。1か月、現地の人々と接し、コミュニケーションすることでわかること、感じられることがある。氏も外国人を相手にビジネスをしている立場として共通感覚のようなものを持っていたのだと思う。

「異文化体験」というのはこういうことをいうのだな、と思った。

そんな話をしながらだったので退屈することもなく、飛行機は定時に成田に到着した。

1か月ぶりの日本である。
1年の12分の1も日本を離れていたのだ。ずいぶんと長かったんだ。

しかし、終わってみればあっという間だった。

今回の滞在記は、失敗談の山、ということもいえるかもしれない(笑)。